アルゴス・ユニットの装着はハサウェイの予期するところではなかった。
規模こそ小さいが抗争は多い。ジオン残党やそれを名乗るテロリストとの実戦で優秀な戦績を挙げている自分だ。
素体としてのオデュッセウスの戦闘データのために呼び出されたと踏んでいた。
新型サイコミュによる、機体追従性向上…そのテストケースのサンプル採取ではなかったのか?
20基のファンネルを完全制御など、あの伝説のエース、アムロ・レイでもなければ不可能だろう。
「私はね…」
指を顎にあてがい、上目遣いなのか白目をむいているのか分からない視線がハサウェイを捉える。
「酢豚が好きでね…」
ハァア!?と、思わず飽きれた声を出しそうになるのを堪えたハサウェイを気にするそぶりも見せず、ローズマリーは続ける。
「パイナップルを入れるだろう?パイナップルのタンパク質分解酵素…ブロメラインが肉を柔らかくする素敵な素敵な隠し味だ…
かといって、缶詰一杯のパイナップルを鍋にぶちまけるマヌケは…いないだろう?」
ならば尚のこと20基のファンネルなど意味不明だ。要領を得ない回答ではぐらかす癖もハサウェイにこの男を嫌わせる点である。
「NT能力も同じでね、キミくらいの方がアルゴスには向いている」
いやらしく唇を歪めてローズマリーは哂った。
「0では困るが100でも困る。最適なのは50か40、それとも10か?NT適正が査定値ギリギリのキミを見つけられたのは僥倖だな」
褒められている気はしない。だがこの男は、心底ハサウェイが適任だと思っている。
なんとなくそう理解できるが、良い気がするはずも無かった。
純白の機体に向き直る。十字架を背負った英雄――そんな柄でもないフレーズが何故か浮かんだ。
クェスのバンド好きがうつったか?ローズマリーに気取られぬよう、ハサウェイは一人苦笑した。