振り下ろされたサーベルを容易く受け流しコクピットへ蹴り込む。
制御を失ったジムⅢと赤いギラ・ドーガがライフルの光で結ばれ、それが両者の別れとなる。
「なってない…なってないぞ連邦、この程度の腕で何が!!」
赤いノーマルスーツの男、チンクエは苛立ちの怒声を上げる。
迎撃に向かってきたコロニー守備隊の錬度は低い。
己が信念、理想に殉じる身であるが、このような腑抜け相手では闘争の張りを感じられぬ。
それには失望を感じなくもない。
しかし、それは同時に彼を安堵させた。脅威となりえる戦力が無いのなら、同志の犠牲も少なくて済む。
何より作戦成功の確率が上がるのは、指揮官としてのチンクエにとって嬉しい誤算と言えよう。
「同志!ここは任せる、私は先行する3人を援護する!墜ちるなよ!?」
新米が1機後退したとはいえ、損耗は向こうの方が多い。
”無駄死にする必要はない”。腑抜けた連邦に実戦をレクチャーしてやればそれで良い。
姿勢を整え、先行する3機目指しバーニアを噴かすと、彼用にチューンされた赤い機体は彗星と化す。
ミノフスキー粒子の濃度は薄い。センサーには同志2機に加え、2つの機影…。
――新手か?だがっ!
デプリを蹴り上げ、『ヘタリア』のエース、チンクエは更に加速する。