同人・創作@加古川 第五区域

加古川 第五区域

ガンダムSS「機動戦士ガンダム オルレアンの聖女」 No.008

チンクエは哂っていた。
チンクエは震えを止められなかった。
武者震えだ。この興奮、震えをどう鎮められようか?

「ふ…ふふふ…そうか、そんなところから狙えるか、この距離で、この間合いで!この2機の合間を撃ち抜けるかぁ!!」
消耗した者を打ち倒す事など、冷めたディナーの残りカスほどの興味も沸きはしない。
強者との遭遇、強者との戦闘――。
宴だ。一度味わうともう忘れられぬ甘美な瞬間――彼の望むそれが、今ここにあるのだ。

「仲間のピンチに颯爽と駆けつけるヒーロー…ってのが、最近の流行なのかい?ハサウェイ」
流した冷や汗が落ちるよりも早く、ビックスの口からそんな軽口が飛び出す。
不思議なものだ、死にかけていたというのに、今はこんなにも安堵している。

白銀の光となって、ガンダム・オデュッセウスは馳せ参じた。
「遅れてすまない、ビックス…先行していたギラ・ドーガは”止めた”…あとは、僕に任せてくれ」
4つ上のビックスへのその言葉には、エースの風格すら感じさせる。
ハサウェイ・ノア――コリントス隊攻撃隊長の存在は、彼を知る者に勝利への絶対の信頼を与える。
満身創痍のジェガン2機が後退する。
損耗が激しいギラ・ドーガ2機も動きを止め、招かねざる客人に神経を集中させる。

赤いギラ・ドーガと純白のガンダムは相対した。
攻め上る者と守り防ぐ者…デプリ漂うこのエリアは事実上の最終防衛ラインとなっていた。